日本の会計監査の問題点を聞いてきた。

　公認会計士の東葭（とうよし）です。ブログのストック原稿は溜まりにたまっているのですが、なかなかタイミングとか、私の精神力が整わずに投稿せずにおりました。お待ち頂いていた方がもしいらっしゃいましたらどうかご容赦ください。少しずつ進めて参ります。

　さて、今回は著名な会計評論家の細野祐二先生の講義を聞いてきたところを私の感想を交えて報告をしたいと思います。なお、本講義は一般社団法人日本CFO協会による細野祐二会計アカデミー第３回であります。細野先生の講義内容やご主張は先生及び当一般社団により公表されるものが正であり、本ブログにおける内容に関する責任は一切東葭にあります。また私が引用する細野先生のご意見についてもあくまで“私の理解”というバイアスが入っている可能性があることをご承知おきください。

　では、本題に入りたいと思います。

　私は、フリーな立場から真に会計監査を考え直したいという思いから大手監査法人のパートナーを脱退したことをご承知の方も多いかと思います。
　そのような私にとって、そのご経歴やご著書から細野先生にとても興味をもっていましたので、細野先生がどのような切り口で「日本の会計監査の問題点」をお話になるのかという機会を見逃すはずはなく、ついに今回その機会に出会いました。フリーの公認会計士という立場からはそれなりに痛い出費でしたが、業界の先輩方のお話を聞く価値のあるものでした。

　先生はオリンパスと東芝の不適切事例を詳細に検討をし、さらに大手監査法人による上場企業の監査報酬総計の占有率、報酬額分析等から以下のような示唆を得られたと、私は理解いたしました。

　すなわち、

• 大手監査法人間で、同規模1社あたり、1時間当たりの監査報酬にほとんど差がない。
• これは大手監査法人間で価格競争が本当の意味で行われていないこと、もっと言えば品質競争がないといえること。
• 価格競争、品質競争が概ね行われていない原因はすべての法人が公認会計士協会に所属しており、業界として安定しているため。（護送船団方式になっている？）
• 過去の不適切事例や監査報酬の企業別順位からみて、監査法人が報酬を多額に払ってくれる企業に対して強くものを言えない状況がみてとれるだけでなく、そもそもほとんど監査業務に時間を費やしていない（膨大な報酬請求時間を使っていない）のではないかと思われること。（実際にやっていないはずはないと考えられてきた監査手続きが実施されていない例が散見される。）
• 監査業務以外に何に時間を使っているかといえば、企業の経理部門や内部統制部門等の下請け業務に時間を費やしている。それによりはじめて企業から価値を認めてもらい監査報酬として収入を得ている。

　これらの示唆からは、日本の会計監査制度には根本的に欠陥があるといえる。

　この問題（欠陥）を克服するためには、もはやAIによって監査を実施するしかないということが結論であったように思います。先生はすでに粉飾しているかいないかを判別するためのソフトウェアを開発済のご様子でした。

　日本の会計監査制度に対して、細野先生のようにドライに割り切った感覚をもつことはまだできませんが、問題の本質・現状をするどく突いていらっしゃると思います。

　しかし、AIで用が本当に足りるのか、そして、そのような方向に進んでいった場合、そもそも公認会計士自体の要・不要や会計監査という制度そのものを根本から見直す必要がでてきてしまうのではないかと不安を感じています。

　大手監査法人にとどまらず、中堅以下の監査法人でも監査を実施している者はもはや公認会計士の資格を有していない割合が急激に増えていることと、そして会計監査の経験が少ない公認会計士の増加は、5年後、10年後の我々の業界を大きく変えていることでしょう。

　そして業界が大きく変わったとしても、変わらずに以下の課題はつきまとっていることでしょう。だから、いま真剣に私たちの仕事としての会計監査を考えなければならないのです。

• 　監査法人の行う監査の品質とは何なのか。
• 　品質で競争できる業界にするにはどうしたらよいのか。
• 　監査法人と企業、あるいは一般投資家にとって望ましい品質の内容は異なるのか。異なるとしたら、どうして異なるのか？
• 　監査法人が問題を発見したとしても、企業に強く迫れない場合があるのはなぜか。
• 　なぜ、最低限実施すべき必要な監査手続きに限って最後まで実施しないのか（途中で止めてしまうのか）。時間（能力）の問題なのか、空気を読んでしまうからなのか。

　一方で、我々のようなプロフェッショナルが生き残る（=社会から必要とされる）ためには同時に新しい監査制度の模索も進めていく時期が来てしまったという思いもあります😅。つまりリスクヘッジもしておかないと、ということですね。。。

　他の多くの業種と同じく日本の公認会計士制度が続くかどうかの正念場です！！！

　志を同じくされる方、一緒に頑張りましょう！！！！！！

Always One Step Ahead

公認会計士東葭新事務所/CPATOYOSHIOFFICE　Group

代表　公認会計士　東葭　新